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2023年02月28日 [BO補助金]
補助金は悪いものじゃない〜補助金をめぐる物語A
(前回までのあらすじ)
40代のHさんは、地元で有名なハウスメーカーの2代目社長です。社員は10名と少ないものの、外注は30名で、丁寧な仕事ぶりにより経営は順調でした。
しかし、コロナ禍による経営悪化を理由に、それまで付き合いのあった元請け会社から取引を断られることに。困ったHさんが藁にもすがる思いで見つけたのが「事業再構築補助金」。
しかし補助金を使う目的、会社の強みを私に問われ、確たる目的もなく申請しようとしていたことにHさんは気づきます。
その夜、Hさんは会社の「強み」「弱み」について考え、箇条書きにしました。
強み
・地元の人に親しまれている。
・長年働いている職人が多い。
弱み
・元請け会社が少ない、いやない…。
「あれ困ったな。弱みがない。でも考えすぎてわからなくなった」
困り果てたHさんは、翌日会社に行き、2人の社員を呼びました。
一人は営業のYさん。Hさんと同じく40代で、先代の社長、つまりHさんのお父さんがいたころから働いています。Hさんとは旧知の仲で、友達のような関係です。もう一人のWさんは設計を担当する20代の男性で、事業再構築補助金のことを友達から聞いて、関心を持っていました。
「…というわけで、まずはうちの会社の強みとか弱みを考えないと始まらないと思ってさ。昨日いろいろ考えたけど、もうなにがなんだか」
すると、Wさんが口を開きました。
「たしかにうちの会社って、地元の人に親しまれてますよね。でも、そこを生かしきれてない気がします。昔から住んでる人で知らない人はいない会社って言っても言い過ぎじゃないけど、若い人はどうだろう。僕は大学時代からこの町に住んで、建築勉強してて、大好きなこの町にあるハウスメーカーで働けたらと探して知ったんですけど」
「たしかにそうだよな。地元の年配の人なら誰でも知ってるってことに胡坐をかいちゃってた感じだよね。俺なんてずっとこの会社にいて、元請けから仕事をとって、完成品を引き渡す、これが滞りなく終わればよしって感じだった。そう、一言で言えば、営業不足。これも弱みじゃないか」
「それに若手社員の能力も使いきれていないと思うんです。いや、仕事してないとかそういうんじゃないですよ。ただ、言われたことをやってればいいって人もいるし、言われた以上のことがやりたくてもできない人もいますよね、それは僕ですけど」
「そうだな。なんか新しいことをしよう!みたいな気持ちはないよね。だからこういう非常事態になったときに、何していいかわからなくなっちゃうんだよ」
ぽんぽん飛び出す2人の意見に相槌を打ちながら、Hさんは思いました。
(会社の強みと弱み、少し見えてきたかも)
「西端さん。こんな具合に書き出してみました」
数日後、私のもとに届いたメールにはこう書かれていました。
強み
・地元で名が通った会社である。
父が一代で築き上げ、この地で仕事を続けてきた。ゆえに、昔からこの地に住む人で知らない人はない会社となっている。
・長年働いている職人が多い。
一戸建てを専門にしてきた熟練の技があり、信頼のおける職人が多い。丁寧な仕事ぶりが顧客から高評価を得ている。
弱み
・営業力が足りない。
これまで同じ元請け会社から仕事を請けていたことに安心して、新たな取引先を開拓しようとする気持ちがなかった。それと、積極的に仕事内容を宣伝していないので、名前を知ってても何をしている会社なのか、地元の若い人は知らない気がする。
・新しいことをしようとする気持ちに欠けている。
同じ会社から依頼された仕事を中心に行なっていたため、何か新しいことしようとする意識が皆に欠けている。若手社員も多いのに、能力を生かしきれていない。
このように考えました。父の代からやっている会社なので、地元の人たちに知られているけど、それって父の力の気がします。それと、建築や設計の知識・技術のある若手社員がいるのに、彼らのいいところを生かせていない。だから、「地元密着」「若手の活用」をキーワードに、自分たちにしかできないことは何かを今考えているんです。
とメールは結ばれていました。
私は返信しました。
「先日お会いしたときよりも、強みや弱みについて、ご自分なりに分析されていますね。そして、『地元密着』『若手の活用』、これは重要なキーワードだと思うのです。
お父さまの代から受け継いできた仕事を続けてきたことは、もちろん評価されるべきことです。でもそれが難しくなったいま、新たな何かを生み出していかなければ、これからの中小企業は生き抜いていけないと思うのです。
ここで一つ提案があります。社員の皆さんのまえで、ご自分の思いを言葉にして話してみてはいかがでしょうか。これからはこの地でしかできない事業を、若手社員の能力を生かしてやっていきたい、それが自分の思いであり、会社として目指すことであると。社員の皆さんが自分に何ができるのか考えるきっかけにもなり、新たなアイデアが生まれてくるかもしれませんよ」
このあと、Hさんが社員を集めて自分の思いを口にしたことで、Hさんの会社にしかできない新たな事業が見つかるのです。続きはまた次回に!
▶続く(補助金をめぐる物語Bは、3月中〜下旬頃に更新予定です。お楽しみに!)
※プライバシー保護のため、お客さま情報の一部の表現を変更させていただいています。
40代のHさんは、地元で有名なハウスメーカーの2代目社長です。社員は10名と少ないものの、外注は30名で、丁寧な仕事ぶりにより経営は順調でした。
しかし、コロナ禍による経営悪化を理由に、それまで付き合いのあった元請け会社から取引を断られることに。困ったHさんが藁にもすがる思いで見つけたのが「事業再構築補助金」。
しかし補助金を使う目的、会社の強みを私に問われ、確たる目的もなく申請しようとしていたことにHさんは気づきます。
その夜、Hさんは会社の「強み」「弱み」について考え、箇条書きにしました。
強み
・地元の人に親しまれている。
・長年働いている職人が多い。
弱み
・元請け会社が少ない、いやない…。
「あれ困ったな。弱みがない。でも考えすぎてわからなくなった」
困り果てたHさんは、翌日会社に行き、2人の社員を呼びました。
一人は営業のYさん。Hさんと同じく40代で、先代の社長、つまりHさんのお父さんがいたころから働いています。Hさんとは旧知の仲で、友達のような関係です。もう一人のWさんは設計を担当する20代の男性で、事業再構築補助金のことを友達から聞いて、関心を持っていました。
「…というわけで、まずはうちの会社の強みとか弱みを考えないと始まらないと思ってさ。昨日いろいろ考えたけど、もうなにがなんだか」
すると、Wさんが口を開きました。
「たしかにうちの会社って、地元の人に親しまれてますよね。でも、そこを生かしきれてない気がします。昔から住んでる人で知らない人はいない会社って言っても言い過ぎじゃないけど、若い人はどうだろう。僕は大学時代からこの町に住んで、建築勉強してて、大好きなこの町にあるハウスメーカーで働けたらと探して知ったんですけど」
「たしかにそうだよな。地元の年配の人なら誰でも知ってるってことに胡坐をかいちゃってた感じだよね。俺なんてずっとこの会社にいて、元請けから仕事をとって、完成品を引き渡す、これが滞りなく終わればよしって感じだった。そう、一言で言えば、営業不足。これも弱みじゃないか」
「それに若手社員の能力も使いきれていないと思うんです。いや、仕事してないとかそういうんじゃないですよ。ただ、言われたことをやってればいいって人もいるし、言われた以上のことがやりたくてもできない人もいますよね、それは僕ですけど」
「そうだな。なんか新しいことをしよう!みたいな気持ちはないよね。だからこういう非常事態になったときに、何していいかわからなくなっちゃうんだよ」
ぽんぽん飛び出す2人の意見に相槌を打ちながら、Hさんは思いました。
(会社の強みと弱み、少し見えてきたかも)
「西端さん。こんな具合に書き出してみました」
数日後、私のもとに届いたメールにはこう書かれていました。
強み
・地元で名が通った会社である。
父が一代で築き上げ、この地で仕事を続けてきた。ゆえに、昔からこの地に住む人で知らない人はない会社となっている。
・長年働いている職人が多い。
一戸建てを専門にしてきた熟練の技があり、信頼のおける職人が多い。丁寧な仕事ぶりが顧客から高評価を得ている。
弱み
・営業力が足りない。
これまで同じ元請け会社から仕事を請けていたことに安心して、新たな取引先を開拓しようとする気持ちがなかった。それと、積極的に仕事内容を宣伝していないので、名前を知ってても何をしている会社なのか、地元の若い人は知らない気がする。
・新しいことをしようとする気持ちに欠けている。
同じ会社から依頼された仕事を中心に行なっていたため、何か新しいことしようとする意識が皆に欠けている。若手社員も多いのに、能力を生かしきれていない。
このように考えました。父の代からやっている会社なので、地元の人たちに知られているけど、それって父の力の気がします。それと、建築や設計の知識・技術のある若手社員がいるのに、彼らのいいところを生かせていない。だから、「地元密着」「若手の活用」をキーワードに、自分たちにしかできないことは何かを今考えているんです。
とメールは結ばれていました。
私は返信しました。
「先日お会いしたときよりも、強みや弱みについて、ご自分なりに分析されていますね。そして、『地元密着』『若手の活用』、これは重要なキーワードだと思うのです。
お父さまの代から受け継いできた仕事を続けてきたことは、もちろん評価されるべきことです。でもそれが難しくなったいま、新たな何かを生み出していかなければ、これからの中小企業は生き抜いていけないと思うのです。
ここで一つ提案があります。社員の皆さんのまえで、ご自分の思いを言葉にして話してみてはいかがでしょうか。これからはこの地でしかできない事業を、若手社員の能力を生かしてやっていきたい、それが自分の思いであり、会社として目指すことであると。社員の皆さんが自分に何ができるのか考えるきっかけにもなり、新たなアイデアが生まれてくるかもしれませんよ」
このあと、Hさんが社員を集めて自分の思いを口にしたことで、Hさんの会社にしかできない新たな事業が見つかるのです。続きはまた次回に!
▶続く(補助金をめぐる物語Bは、3月中〜下旬頃に更新予定です。お楽しみに!)
※プライバシー保護のため、お客さま情報の一部の表現を変更させていただいています。