[BO補助金]
2023年05月13日
補助金は悪いものじゃない〜補助金をめぐる物語C
(前回までのあらすじ)
40代のHさんは、地元で有名なハウスメーカーの2代目社長です。社員は10名と少ないものの、外注は30名で、丁寧な仕事ぶりにより経営は順調でした。
しかし、コロナ禍により経営がピンチに! そんなときに見つけた「事業再構築補助金」の申請に向け、Hさん、若手社員のTさん、Wさんが動き出しました。
前回までの記事はこちらから
補助金は悪いものじゃない〜補助金をめぐる物語B
補助金は悪いものじゃない〜補助金をめぐる物語A
補助金は悪いものじゃない〜補助金をめぐる物語@
前回の打ち合わせから1週間後、再び3人は集まります。営業のTさんが話し始めました。
「このあたりって、空き家や人が住んでいないようなアパートがけっこうありますよね。これまではそういうのを見ると、ここどうなるのかなあって漠然と思ってました。でも、もしかしたらこういうところに、私たちができることがあるんじゃないかって考えたんです」
「僕も空き家が多いのは感じていたよ。よく話題になる空き家問題は、人がいないから物騒だって取り上げられるけど、僕からするともったいないなって思う」
「それで私が考えたのは、リフォーム、リノベ。これまで、うちの会社が対象にしていたお客さまはファミリーだったでしょ。でも、これからはもう少しその対象を広げてみてはどうかと思って」
「例えば?」
「2階建ての空き家をリフォームして、コワーキングスペースにする。アパートだったら、リノベーションして、学生寮のような若い人たちが気軽に借りられる場所に変えるとか」
「たしかに有効活用はできるよね。でも、これまでの事業再構築補助金の採択例でもリフォームやリノベって見かけたことがあるような…ありがちな気もするけど」
「リフォームにリノベって言葉だけ聞いたらありがちだけど、私たちには長年共に仕事をしてきた職人さんたちがいる。この間の打ち合わせで、社長が『コラボ』って言ってたでしょ。壁にしても、備え付けの家具にしても、これまでのうちの施工例では、いくつかのパターンからお客様が選択するにとどまっていた。でもこれからは、職人さん、建物の所有者の方たちと細部の材質から仕上げまで共に考え、作りこんで、大袈裟だけど『たった一つの建物』を提供していく。どうですか、社長」
「いい感じだね。地元密着で若い人たちに向けた事業っていう点は、うちがまさに目指しているところ。でも、あと一歩、売りになることがあればいいよね」
「売りにつながるかわからないけど、うちってホームぺージの見せ方とか宣伝の仕方が昔ながらっていうか、うまくないって前から思ってたんですよ。ホームぺージにこんな住宅に仕上がります!って載せるのは、どこの会社でもやってること。
例えば、打ち合わせしている様子を車のショールームみたいに見えるようにするとか、うちにはこんな職人がいて、こんなところを得意にしているというように、『仕事を見える化』する。名が知れた会社だけど、うちが何をしているのかわからないっていう若い人たちに向けての営業につながっていくんじゃないかな」
「見える化、それもいいね」
「というわけで、事業再構築補助金の申請にむけての方針は固まりました。『リフォーム、リノベーションによる空き家、アパートの活用事業』です。
最初は私もリフォーム、リノベーションならうちもできると漠然と考えていたけど、それ以上何ができるのかわからなかった。でも、会社が目指すべき方向性が見えて、若い能力をもっと活用しようと決まったら、自然と新事業も見えてきた気がします」
「そうです、Hさん。最初は無理に『採択されるための事業』にしようと考えていたように私には見えました。だから、なかなか結論にたどりつかなかったんではないでしょうか。
事業再構築補助金は採択されることも大事だけど、そこから先が大変なんです。自分たちにできないことを背伸びしてやろうとしたら、つまずいてしまいかねません。
何も奇をてらったことでなくていい。この地で散見される空き家や空きアパートを利用すること、若い社員の知恵、職人の方たちの技術を存分に使うこと、若い方たちに営業していくこと、どれ一つとっても、Hさんが会社として目指そうとする『地元密着』『若い力の活用』が生かされています。自分たちにできる新しい何かであることが一番大事なんです」
こうして、Hさんの会社は事業計画書を作成し、事業再構築補助金の申請に駒を進めました。その後どうなったのかは次回ご紹介しましょう。
▶続く(補助金をめぐる物語Dは、5月下旬頃に更新予定です。お楽しみに!)
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