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[BO補助金]

2022年08月24日

補助金は本当にやりたいことに使おう!

「景色がよくて、空気もいい場所ですね」思わず口にした私がいるのは、観光地として有名なX県Y町。風光明媚なこの地で、私のお客さまのAさんは代々旅館を営んでいます。しかし、新型コロナの影響を受け、宿泊客が激減、従業員からは行く末を心配する声も聞かれるようになりました。

そしてなにより一番不安に思っているのはAさんのご両親。すでに引退されていますが、地元でも名が知れた旅館の経営が傾いていることがとても気がかりな様子です。そこでAさんは補助金を使って、旅館を立て直そうと決心しました。

「うちの旅館は部屋からの眺めが最高!と常連の方に褒めていただき、ネットの口コミでも評判です。嬉しいんですが、プラスアルファなにか特長となることが欲しい。両親とも話して、うちに足りないのは料理なのではないかと気づきました。補助金で最新の優れた設備を購入したら、新しい料理にももっと挑戦できるんじゃないかって、両親が言うんです」

そう話すAさんですが、なんとなく覇気がなく、話に具体性がないことが気になった私はこう言いました。「なるほど。たしかに料理って大事ですよね。工夫が凝らされ斬新な料理だったら、話題にはなる。だけどAさん、どんな設備を使って、どんな料理を作りたいのでしょう。それと女将さんであるAさんの奥さまはどうおっしゃっているのですか」

すると、「じつはまだ具体的なことは決めていなくて…両親の守ってきた旅館なので、両親が望む形にしたくて…」とAさん。先ほどから何度も繰り返される「両親」という言葉が引っかかり、私は言いました。

「この旅館はすでにAさんが引き継いでいて、今回の補助金申請もAさんが決めたことでしょう。Aさんがなにをしたいのかが一番大事なんです。Aさんの本音は別のところにあるんじゃないんですか

最後の私の一言にはっとしたのか、俯きがちだった顔を上げ、Aさんは話しだしました。

「じつは私と妻は違うことを考えていて。さっき眺めがいいと言ったでしょ。私たち夫婦はこの自慢すべき長所を生かして、リモートワークができる旅館に変えたいんです。都会の喧騒を離れて、必要な設備が整った部屋で、仕事の合間にふと窓の外を見たら美しい景色がある。最高でしょ。調べたら、ワーケーション向けの旅館はこのあたりにはない。絶対話題になると思うんです」

さっきとは別人のような笑顔で話すAさん。私もつい嬉しくなって言いました。

「そう、それですよ、Aさん。悲しいかな、これからはウィズコロナの時代。コロナによって会社に行かなくても仕事ができるとわかった今、リモートワークを推進する会社は今後も増えるでしょう。だから、ときには自分へのご褒美で、仕事をしながら休息もとれる旅館で過ごすのっていいと思います」

前回のコラムでもお話ししましたが、補助金は「獲得すること」が目的ではありません。会社にとって「補助金がなぜ必要なのか」を考え、「補助金を使ってなにをするのか」が大事なのです。Aさんのように、好きなことややりたいことを事業に生かすことで、会社の目指す方向性が自ずとわかり、最終的なゴールも見えてくるのです。

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